「AI美女×副業」というジャンルで語られていることを、検証できるデータだけで確かめていく連載です。第一回は、私自身の運用データが出てくる前の準備編として、買う前に自分で確かめる方法と、実際に3つの商材を調べた結果を共有します。
その「完売」は、いつ売れたものか
AI画像の副業に興味を持って調べはじめると、有料の教材(いわゆる情報商材)にたどり着くことが多いと思います。販売ページには「◯◯部完売」「◯◯部突破」といった実績、星5のレビュー、残り部数のカウントダウン。数万円は安くない買い物ですから、「これだけ売れていて評価も高いなら」と判断材料にしたくなる気持ちは、私にもよく分かります。
ただ、ここでひとつ確認しておきたいことがあります。
「累計◯◯部完売」という表記は、「今も売れている」ことを意味しません。
170部が売れたのが今月なのか、それとも2年前なのか。販売ページの表記だけでは区別がつかないのです。そしてこの「いつ売れたのか」は、誰でも無料で、5分あれば自分で調べられます。
検証の方法──Wayback Machineで販売ページの「過去」を見る
使うのは Wayback Machine(web.archive.org)です。米国の非営利団体Internet Archiveが運営しているサービスで、世界中のWebページを定期的に保存(アーカイブ)しています。過去のある時点で、そのページに何が表示されていたかを誰でも確認できます。
手順は次の通りです。スクリーンショットがなくても再現できるよう、具体的に書きます。
- 調べたい商材の販売ページのURLをコピーする。 ブラウザのアドレス欄に表示されている文字列です。
- web.archive.org を開き、検索窓にそのURLを貼り付けてEnterを押す。
- カレンダーが表示される。 色付きの印がある日付が「その日のページが保存されている日」です。年ごとに切り替えて、保存されている日付を確認します。
- 古い日付のスナップショットから順に開き、部数表記をメモする。 見るのは「◯部完売」「残り◯部」「◯部限定」といった数字と、そのスナップショットの日付です。
- 日付と部数を並べて、期間あたりの増加数を計算する。 たとえば「2024年5月に130部→2025年10月に174部」なら、17ヶ月で44部、月あたり約2.6部です。
- あわせてレビュー欄も見る。 レビューの投稿日、星の数、本文に「モニター」等の記載がないかを確認します(この意味は後述します)。
注意点が3つあります。まず、アーカイブが保存されていないページもあります。その場合は「検証できなかった」という事実として扱い、部数表記を鵜呑みにする理由にはしないでください。次に、アーカイブは取得時点の表示の記録であり、表示内容の真偽そのものを保証するものではありません。最後に、これから買うか検討しているページは、Wayback Machineの「Save Page Now」機能で今日の状態を自分で保存しておくことをおすすめします。数ヶ月後に表記がどう変わったかを、自分の手で確認できるようになります。
実測結果──3つの商材の時系列
この手順で、国内のコンテンツ販売プラットフォーム上の「AI美女で収益化」をテーマにした商材3つを調べました。いずれも販売実績の表記が大きく、このジャンルの代表的な商材といえるものです。本記事の目的は特定の商品や販売者への批判ではなく確認方法の共有なので、商材名・販売者名・プラットフォーム名は伏せ、価格も概数にして、A・B・Cと呼びます。数値はすべて2026年7月13日時点で私がアーカイブと現行ページを突き合わせた実測です。
商材A──ファンサイト攻略系(3万円弱・完売表記あり)
| 時点 | ページ上の表示 |
|---|---|
| 2024年5月24日(アーカイブ) | 累計130部の完売表記・140部限定で残り10部 |
| 2025年10月23日(アーカイブ) | 175部限定で残り1部(=174部) |
| 2026年7月13日(現行ページ) | 累計170部の完売表記・180部限定で残り5部(=175部) |
2024年5月から2025年10月までの17ヶ月で約44部、月あたり約2.6部。そして2025年10月から2026年7月までの約9ヶ月間の増加は1部でした。累計175部の大半は、2024年前半までに売れたものだと読み取れます。なお販売ページには収益に関する実績も掲げられていますが、これは販売者の自己申告であり、第三者による裏付けは確認できませんでした。
商材B──物販系・高価格帯(最終価格2万円台半ば・部数突破表記あり)
| 時点 | ページ上の表示 |
|---|---|
| 2024年6月17日(アーカイブ) | 174部(発売約10日・先行販売100部を含む) |
| 2024年11月23日(アーカイブ) | 237部 |
| 2025年8月7日(アーカイブ) | 「販売終了しました」表示 |
| 2026年7月13日(現行) | 同じく販売終了表示のまま |
発売約10日で174部(先行販売100部を含む)に達したあと、2024年11月までの約5ヶ月間の増加は63部(月あたり約13部)。その後さらに失速し、遅くとも2025年8月までに販売終了となっていました。確認できた最後のレビューは2025年6月2日付です。勢いよく売れた商材でも、販売の実質的な寿命は1年前後だったことになります。
商材C──物販系・約1万円帯(完売表記あり)
| 時点 | ページ上の表示 |
|---|---|
| 2024年6月17日(アーカイブ) | タイトルに累計150部の完売表記(ページの公開日表示は2024年4月24日) |
| 2025年8月7日(アーカイブ) | 累計150部の完売表記のまま |
| 2026年7月13日(現行ページ) | 累計150部の完売表記のまま増加なし |
2024年4月24日の公開から2ヶ月足らずで150部の完売表記に到達し、そこで止まったまま、2026年7月まで部数表記は動いていません。ページ内のコンテンツ最終更新日も2024年6月8日で止まっていました。なお同じ2024年6月中旬のアーカイブでは、別の商材の販売ページ内にこの商材を「100部完売」と紹介する宣伝文が残っており、100部から150部へ駆け上がった直後に止まったことが読み取れます。
3商材に共通するのは、販売の山が2024年前半にあり、2025年後半以降はほぼ動いていないことです。それでもページ上の「完売」表記と星評価は、今日アクセスしても当時のまま表示され続けます。
数字の読み方(一)──段階値上げ制と「累計部数×現在価格」
もうひとつ、アーカイブを見ると分かることがあります。この価格帯の商材の多くは「10部売れるごとに値上げ」といった段階値上げ制をとっています。
たとえば商材Aのページには、2024年1月に現在の価格(3万円弱)に到達したことが記載されていました。つまり、それ以前に売れた百数十部は、もっと安い価格で販売されていたことになります。商材Bも、アーカイブ上で2万円弱(2024年6月)→2万円台半ば(2024年11月)と価格が推移していました。
何が言いたいかというと、「累計175部×現在価格3万円=約500万円の売上実績」のような掛け算は、構造的に過大な見積もりになるということです。累計部数の表記も現在価格の表示もそれぞれは事実ですが、掛け合わせた瞬間に実態から離れます。販売ページがこの計算を主張していなくても、読み手はこの掛け算を頭の中でしてしまいがちです。掛け算をする前に、値上げの履歴をアーカイブで確認してみてください。
数字の読み方(二)──レビューの日付と「モニター」表記
商材Aには2026年に入ってからの星5レビューが2件ありました(2026年4月14日付と6月24日付)。一見すると「今も買われていて、今も評価されている」証拠に見えます。
ところが、先ほどの実測では同時期の販売増加は9ヶ月で1部です。よく見ると、この2件のレビューにはいずれも「モニター」である旨の記載がありました。モニターレビューは一般に無償または優待での提供を伴うことが多く、有償で購入した人の評価とは分けて見る必要があります。
モニターレビュー自体は、その旨が明記されていれば直ちに問題のある行為とはいえません。ただ、購入判断の材料としては意味合いが異なります。チェックの仕方はシンプルです。
- レビューの日付と、販売部数の増加ペースを突き合わせる。 部数がほぼ動いていない時期にレビューだけが増えていたら、その出どころを考える
- レビュー本文と欄外の小さな表記まで読む。 「モニター」「先行提供」等の記載の有無を確認する
- レビュー件数と累計部数の比率を見る。 部数のわりに直近レビューだけが妙に新しい場合も、日付の分布を確認する
買う前の5分チェックリスト
ここまでの内容を、そのまま使える形にまとめます。
- 販売ページのURLをWayback Machineに入れて、部数表記の時系列を確認する(いつ売れたのか)
- アーカイブ間の価格の推移を確認する(累計部数×現在価格の掛け算をしない)
- レビューの日付・「モニター」等の表記を確認する(有償購入者の評価か)
- 収益に関する実績表示は、第三者の裏付けがあるかを確認する(スクリーンショットは自己申告であり、それ自体は裏付けになりません)
- 検討中のページを**「Save Page Now」で自分で保存**しておく(後日の変化を自分で検証できるようにする)
これは「情報商材を買うな」という話ではありません。表記の時系列を確認した上で、それでも自分に必要だと判断したなら、それは根拠のある買い物です。判断の材料を、販売ページの表示だけに預けないでほしい──それだけの話です。
この連載が続けること
このジャンルには、検証可能なデータがほとんどありません。あるのは自己申告のスクリーンショットと、時系列の分からない「完売」表記です。だったら、検証可能なデータを一つずつ作って置いていくことには意味があるはずだ──それが本誌の出発点です。
本連載は今後も、販売実績表記のアーカイブ検証を続けます。あわせて特集・ツール実測では生成ツールの実測データを、規制年表ではプラットフォーム規制の推移を公開していきます。「AI美女で稼げる」の実態を知りたい方は、まずこの3つを見比べてみてください。
本記事の数値は、2026年7月13日時点でInternet ArchiveのWayback Machineに保存されたスナップショットおよび現行ページの表示を、筆者が突き合わせて確認したものです。アーカイブは各時点の表示の記録であり、その後ページが変更・削除されている可能性があります。
